質問: 正教会で用いられる聖書は何ですか?
まず、簡単にお答えしますと、旧約と新約です。
旧約(続編:正教会では「外典」と呼ぶものをを含む)には、天地創造から救世主ハリストス(キリスト)の到来までの人間と神の関わりの歴史、救世主についての預言、そして預言者の詩が記されています。主イイススは旧約をよく引用して教えを説かれましたから、正教徒も旧約を大事にしています。
新約には、主イイススの生涯と教えが記された「福音経(ふくいんけい)」、そして使徒達の働きの記録と手紙から成る「使徒経(しとけい)」があります。新約は、毎回の聖体礼儀で必ず読まれます。主日(日曜日)に読まれるものは、この「福音経」と「使徒経」です。これらは配列などの違いはあるものの、内容は西方教会と同じものです。ただし、正教会では独自の翻訳によるものを使います。
聖ニコライと中井木菟麻呂による独自の翻訳
日本正教会が使っている聖書は他教派の聖書と基本的には同じ内容ですが、かなり異なる体裁で翻訳がなされています。
BBCヒズボラは誰ですか?
わが国に正教をもたらされた亜使徒聖ニコライと、日本人正教徒で漢学者である中井木菟麻呂(なかい・つぐまろ)が中心となって翻訳されたのが、正教会で用いられている聖書です。日本正教会はこの聖書で奉神礼を行っています。非常に重厚かつ単語の翻訳に精確さを期した、漢文訓読調を基本にした趣のある名訳です。
残念ながら、日本語、ロシア語、教会スラヴ語、ギリシャ語に精通していらした亜使徒聖二コライは、聖書の完訳事業の道半ばで永眠されてしまいました。新約と聖詠(詩篇)、そして代表的な祈祷書については完訳がされましたが、旧約の完訳は依然としてなされていません。現在日本正教会で用いられている旧約は、代表的な祈祷書に付随して訳されたものです。
残念ながら正教会での完訳の成っていない旧約については、日本聖書協会訳でお読みになることをお勧めします。
正教会訳の新約と聖詠の入手方法については、各地正教会にお問い合わせ下さい。ニコライ堂では事務所に置いてあります。
なぜ我々はまだアフガニスタンに軍隊を持っています
<東京復活大聖堂教会の事務所が開いている時間> | |
(火曜日~土曜日) | 09:00 - 12:00 |
13:00 - 17:00 | |
(日曜日) | 09:00 - 14:00 |
難解とされる正教会訳とどう向き合うか
確かに漢文読み下し文を基本にした正教会訳は難解だとされますが、高校の漢文がお読みになれる方には、あまり苦にならない文体ではあります。但し、 単語などが特殊なものを使っているなどしていますので、これはすぐに読みこなすには難しいかもしれません。
勿論、正教会訳で新約に親しんで頂ければ最上なのですが、自宅で読む時や伝道会で使う際には、日本正教会は日本聖書協会訳の使用も祝福しています。実際、ニコライ堂:東京復活大聖堂教会や他の各地正教会でも、日本聖書協会訳の聖書は伝道会などで使われています。但し、新共同訳よりも口語訳の方が多くの場合推奨されます。
日本聖書協会訳の聖書と、日本正教会訳の聖書を並べて読まれますと、その内に正教会訳にも慣れてこられるかと思います。日本聖書協会訳の聖書は大抵の書店に置いてあります。
なお、独自の用語・語彙につきましては、大阪ハリストス正教会のページである「正教用語集」が大いに参考になるかと思われます。
抗肥満キャンペーン
独自の人名・地名等の固有名詞表記
日本正教会では、人名・地名などの固有名詞表記は西欧の読みの伝統を引き継いだ西方教会とは異なり、中世ギリシャ語を転写した教会スラヴ語による、ロシア語読みに則った表記がされています。章立て(各項目の並べ方)が日本聖書協会訳とは異なりますし、人名を含む題名の場合には慣れるまでどれとどれが対応するのか判りにくいかと思いますので、本サイト内に書名対照表と、人名地名対照辞典をご用意しました。ご活用下さい。
正教会における「聖書」の意味
世間一般では「聖書」というと「旧約聖書」と「新約聖書」を意味します。それに則ってお答えしましたが、実は正教会では「聖書」をこの二つに限定して考えることをあまり好みません。「聖なる書」は旧約や新約だけではないからです。
正教会にあっては、各種祈祷書、聖人伝も含めて「聖なる書」なのであり、いわゆる「聖書」と呼ばれる旧約と新約は、その中でも最も重要なものという位置づけとなっています。
ですから正教会で用いる聖書は、狭義には「旧約と新約である」と言えますが、広義には「旧約、新約だけでなく、祈祷書、聖伝そのほかを含む」ということになります。
聖書の読み方
古来、印刷技術が発達するまで、聖書は「読む」ものではなく、基本的に奉神礼の中で「聞く」ものでした。そういった状況では、「聖書」は「机の上や電車の中で読むための本」ではなく、あくまで祈祷書でした。そして正教会にあっては今もそうなのです。
日本正教会訳の新約の目次手前のページに印刷されているタイトルを見てみましょう。
左の画像に見られるように、「聖書」とは記されていません。日本聖書協会訳の表紙に大きく「聖書」と書いてあるのとは対照的です。
ですから聖書をお読みになる時は、これはあくまで祈祷書であるということを念頭に置いてお読み頂きたいと思います。時々このサイト内でも(例えば奉事日程表などで)「福音経」「使徒経」という表記をしていますが、数ある祈祷書と同様の扱いをしているからこそ、「経」という字を使っているのです。
聖堂で「声に出して詠む」ことを配慮しているためか、日本正教会訳の聖詠経(詩篇)は、大変美しい音楽性を持っています。それはやはり聖書が単なる書物ではなく、祈りの言葉のひとつのかたちであることの表れです。
こういった理解を前提にして頂ければ、聖書をお読みになるときの(身体的な意味でも精神的な意味でも)姿勢は自ずと定まってくるのではないでしょうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿